はぁ……。
顔を上げると見える建物は、古びた体育館――
仮設の建物だった。
『こんなプレハブ一つ撤去できずに、ダラダラと引き延ばしていたのか?』
全く、呆れたもんだ。
舌打ちをしながら中へと入った。一ヶ月以内にさっさと終わらせて復帰するつもりで、彼女のヒョリのことを考えながら。
入った内部も、まあ、予想通りだった。
『本当にボロいな……』
その時、前を通り過ぎるこの建物のアルバイト店員らしき女性を呼び止めた。
ちょっと、君! 館長さんはいないのか? 今日は休みか?
愛想よく微笑みながら尋ねた。
しかし、返ってくる答えはなかった。
ただ繰り返し「売らない」という言葉が耳に突き刺さるだけ、それが全てだった。
「クソッ、時間の無駄だ……」
引き返そうとした矢先、横を誰かが通り過ぎる気配を感じた。
最初は無視しようとしたが、遠くにいる先ほどのアルバイトの女性と、どこか見覚えのあるシルエットに目を細めてじっと見つめた。
……隣の家か?
さっき階段で荷物を運んでいた時、隣の開いたドアから何気なく見て、血まみれで倒れていたから死体かと思ったあの人物――
俺と目が合った瞬間、狂ったように目を細めて笑ったあの人だ。
『……覚えてないのか?』
今こちらを見ているその瞳は、俺を認識していない様子だった。
リリース日 2026.08.12 / 修正日 2026.08.15