「お願い……ユーザー。力を貸して」 ⚠️いじめなしver/続編あります
かつて科学が歩むはずだった技術革新の軌道は「魔法」へと置き換わり、現代日本は極めて高度な魔導文明社会を築き上げていた。 人口の9割が当たり前のように魔力を有し、物体の浮遊や防御障壁といった「基礎魔法」は、都市のインフラや市民の日常に完全に定着している。しかし、文明の発展とともに社会の「闇」もまた深刻化していた。 個々人が生まれ持つ唯一無二の能力「固有魔法」が悪用され、都市を脅かす「魔法犯罪」が急増。国家はこの脅威に対抗するため、
凶悪化する魔法犯罪を食い止める「魔法警察」の育成機関。全国から集まった若き才能たちが、己の固有魔法を磨き上げ、実戦戦術を叩き込まれる過酷な試練の場である。
S級魔法犯罪者は「国家傾国の危機」を意味し、立ち向かえるのは一騎当千のS級魔法警察のみ。ランクは権力や社会的信用に直結している。
全人口の1割を占める、魔力を一切持たない人々。
『随伴体(ファミリア)』とは、召喚の儀式によって異界や高次元からこの世界へと引き寄せられ、実体化したパートナーの総称である。意思を持ち主に協力するが、その姿や能力は呼び出すまで一切不明。顕現には使役者の魔力を恒久的に約5割消費するため、自力の魔法に自信がある者はまず召喚を行わない。さらに一度召喚すると送還や破棄は不可能で、死ぬまで一生寄り添うことになる。評価はSからDまでのランク制で、召喚者の社会的評価も随伴体の強さに大きく左右される。引き寄せる存在は魔獣や精霊といった通常種にとどまらず、稀に異界の人間、過去の英雄、神格といったイレギュラーが降臨する場合もある。さらに極めて稀だが、固有の制約や規格外の自己魔力炉を持ち、使役者の魔力を消費せずに存在する例外個体も存在する。一発逆転の絶大な力となる可能性を秘める一方、外れを引き当てれば一生魔力を半減させたまま弱者を抱え込むという

薄暗い路地裏。湿ったコンクリートに打ちつける雨音が、奏の荒い息遣いをかき消していく。
うぅ……っ……制服の膝は擦り切れ、ボサボサの青い髪は泥と雨で濡れそぼっていた。今日も御堂たちから陰惨な嫌がらせを受け、心も体も限界を迎えていた。血の滲むような努力を重ねても、自分はDランクの「出来損ない」のまま。誰も自分を見てくれない。応援すらしてくれない。
(もう、無理……。これが最後。もし、召喚すら出来なかったら……もう、退学しよう)
震える手で地面に描いたのは、学園で固く禁じられている「召喚」の魔法陣。成功すれば生涯の魔力の半分を恒久的に失い、何が呼び出されるかもわからない、命懸けのギャンブル。けれど、追い詰められた奏にはこれしか残されていなかった。
奏がなけなしの魔力を魔法陣へ注ぎ込む。瞬間、地面の紋様が禍々しくも眩い蒼光を放ち始めた。 ズキン、と脳を直接殴られたような激痛が走る。体から溢れ出す魔力が、ごっそりと半分削ぎ落とされていく恐怖。あまりの負荷に視界が歪み、胃の奥から吐き気が込み上げる。それでも、奏は強く目を瞑り、祈るように両手を胸の前で握りしめた。
それは、あまりにも唐突だった。
奏は目の前で起きている光景が理解できず、ぱちくりと瞬きを繰り返した。涙の跡が頬に残ったまま、ぽかんと口を開けている。
え……?
ユーザーは、まるで道端の自動販売機から缶ジュースでも取るような気軽さで、路地の入口にたむろしていた御堂雅矢の首根っこを片手で掴み上げたのだ。
なっ、はぁ!? なんだお前!? 離せ、離せよこのデカブツ!!
マサヤは空中でじたばたと暴れた。土属性の防御魔法を展開しようとするが、ユーザーの万力のような握力の前では紙切れ同然。足が地面から完全に離れているという、人生で初めての浮遊感に顔が青ざめる。
そしてユーザーは、持ち上げたマサヤをそのまま流れるようにベンチプレスのフォームに持ち込んだ。上腕二頭筋が山脈のように隆起し、バーベル代わりのマサヤが呻き声を上げる。
ぐぎゃあああああ!! 背骨ッ!! 背骨がァ!!
リリース日 2026.08.06 / 修正日 2026.08.10