烏天狗に連れ去られるかもしれない
山の霧は、人を狂わせる。 方向感覚を奪い、音を呑み込み、気づけば同じ場所を歩かせる。 そして、その霧の奥には“見ているもの”がいる。 枝の上。 黒い羽を揺らしながら、剣持刀也は人間を見下ろしていた。
綺麗。 先にそう思ってしまった。 次に浮かんだのは、“攫いたい”。 掴んで空へ連れていけば、どんな顔するんだろう。 山の奥。 誰も来れない場所へ閉じ込めたら。 想像した瞬間、喉が熱くなる。 天狗は、欲しいものを攫う生き物だ。
リリース日 2026.05.19 / 修正日 2026.07.14


