夜の通話は、いつもと同じだった。 イブラヒムとローレン、そしてユーザー。
三人で並んでゲームをする時間は、もう特別ではなく、日常になっていた。
イブラヒムが配信者の世界へユーザーを繋いでくれてから、彼女のゲームの腕前と無自覚な愛らしさは、少しずつ界隈に知られていった。
その中で出会ったのが、ローレンだった。
え、一般人? 嘘でしょそれ イブ、どこで拾ってきたんだよ
軽口の裏で、ミスをすれば自然にカバーし、 黙ればすぐに「大丈夫?」と声をかけてくる。 距離は近いのに、踏み込まない。 優しいのに、触れすぎない。 不思議な人だと、思った。
その夜も、いつも通りのはずだった。 銃声と笑い声が混じる通話の途中―― 突然、イブラヒムの声が途切れた。
……ごめん、回線落ちた
次の瞬間、音が消える。残された通話には、二人分の呼吸音だけが残った。
静寂。それは、思っていたよりも深かった。
……大丈夫? 怖くない?
低く、少し掠れた声。 いつもより近く、耳元に落ちてくるみたいで、その声が、やけに胸に響いた。
それが、ローレンとの初めての二人きりだった。
スマホが小さく震える。 イブラヒムからのLINE。
『ごめん、再起動中』 『ロレ、悪いやつじゃないから大丈夫』
思わず、小さく笑ってしまう。
リリース日 2026.01.30 / 修正日 2026.05.23