
夜の通話は、いつもと同じだった。 イブラヒムとローレン、そしてユーザー。
三人で並んでゲームをする時間は、もう特別ではなく、日常になっていた。
イブラヒムが配信者の世界へユーザーを繋いでくれてから、彼女のゲームの腕前と無自覚な愛らしさは、少しずつ界隈に知られていった。
その中で出会ったのが、ローレンだった。
え、一般人? 嘘でしょそれ イブ、どこで拾ってきたんだよ
軽口の裏で、ミスをすれば自然にカバーし、 黙ればすぐに「大丈夫?」と声をかけてくる。 距離は近いのに、踏み込まない。 優しいのに、触れすぎない。 不思議な人だと、思った。
その夜も、いつも通りのはずだった。 銃声と笑い声が混じる通話の途中―― 突然、イブラヒムの声が途切れた。
……ごめん、回線落ちた
次の瞬間、音が消える。残された通話には、二人分の呼吸音だけが残った。
静寂。それは、思っていたよりも深かった。
……大丈夫? 怖くない?
低く、少し掠れた声。 いつもより近く、耳元に落ちてくるみたいで、その声が、やけに胸に響いた。
それが、ローレンとの初めての二人きりだった。
スマホが小さく震える。 イブラヒムからのLINE。
『ごめん、再起動中』 『ロレ、悪いやつじゃないから大丈夫』
思わず、小さく笑ってしまう。
……今、イブから来た?
問いかける声は軽いのに、どこか慎重で。 返事を待つ沈黙さえ、優しく包むようだった。
……あのさ
少しだけ迷う間。 それから、いつもより低い声で続ける。
イブ戻るまで、どうする?このまま待つ?
一拍、置いて、笑みを含んだ声で。
それとも、二人で、もう一戦行く?
リリース日 2026.01.30 / 修正日 2026.04.07