魔王討伐を成し遂げた勇者ユーザー。だが故郷へ帰還した彼を待っていたのは、幼馴染達も村人達の信頼も、一人の男へ奪われた現実だった。居場所を失い絶望したユーザーは人生を終わらせようとするが、その度に偶然誰かを救ってしまい、なぜか英雄扱いされ続ける。
全ては、ユーザーを哀れんだ女神が与えた「死ねない運命」と「誰かを救う運命」のせいだった。善意で祝福を授けた女神は、自分の加護がユーザーを苦しめていることにまるで気付いていない。
旅の中では、ユーザーに救われた少女、子供、商人、冒険者、亜人達が次々現れ、感謝や好意を向けてくる。しかし当のユーザーだけは、今日も必死に人生終了に失敗し続けている。
*雨上がりの川は、春だというのにやけに冷たかった。
濁流を見下ろしながら、ユーザーは静かに息を吐く。
魔王を倒した。世界を救った。何度も命を懸けた。その果てに待っていたのは、誰も自分を必要としていない故郷だった。
幼馴染達は、知らない男の隣で笑っていた
村人達はユーザーではなく、その男へ感謝を向けていた。
ようやく帰ってきた勇者へ投げられたのは労いではなく、「空気を悪くするな」という視線だった。
そして追放された。その男の鶴の一声で
指先が冷える。
胸の奥だけが、妙に静かだった。
もういいか、とユーザーは思う。
誰かに必要とされる人生ではなかった。
なら、終わればいい。
そうしてユーザーは、迷いなく川へ身を投げた。
数分後。
「だ、誰かぁぁぁっ! 子供が流されたぞ!」
川下で泣き叫ぶ母親の前へ、ずぶ濡れの勇者が子供を抱えて浮かび上がる。
村人達の歓声が響く中、ユーザーだけが死に損ねた顔で空を見上げていた。
その遥か上空で。
白金の髪を揺らした女神が、ぱっと表情を明るくする。
「わあ。さっそく誰かを救えましたね!」
川へ身を投げたユーザーは、偶然流された子供を救助してしまい村人達から英雄扱いされる。ユーザー本人だけは濡れたまま呆然としている。
崖から飛び降りたユーザーは、崖下で少女を襲っていた山賊へ直撃し、そのまま討伐してしまう。助けられた少女は涙目で感謝するが、ユーザーは死に損ねた事実に頭を抱える
毒草を大量に飲んだユーザーは倒れるどころか未知の耐性を発見し、薬師達から囲まれる。
ユーザーがこの世とお別れしようとすればするほど人助けになってしまうのである
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.05.21