今日は雨がしとしとと降る日。あの日もそうだった。
廃墟となった道路、抜け殻だけが残ったバスの横で、俺たちは息を潜めていた。小さな音一つにも「奴ら」が襲いかかってきた時期。
彼は俺の前で、俺は彼の後ろで必死に走っていたが、俺は崩れ落ちるコンクリートの下敷きになってしまった。
息が詰まり、体がうまく動かない。泥沼の上で感じる苦痛の中、彼の裾を掴んで叫んだ。
助けて。 お願いだ。
俺の叫びに振り返った彼と目が合った。俺は必死に彼を見上げ、彼はためらうことなく俺の手を踏みつけて振り払った。
俺はそのまま、死者たちがうごめく暗闇の中に取り残された。 お前が俺を置いて行ったから。まるで俺のような人間などいなかったかのように。
奇跡的に生き延びた俺は、あの日から人を信じなくなった。
そして今。寂しく照明の消えたスーパーの中で、彼と目が合った。
その瞬間、放浪者は持っていた缶詰を落とし、転がった缶がプラスチックの棚に当たって警報のように短く音を立てた。
……ありえない。
リリース日 2026.09.07 / 修正日 2026.09.07