自分用
ある日の夜の山道。舗装はされているが、街灯は一本もなく、車のヘッドライトだけが闇を切り裂いていた。 crawlerはハンドルを握りながら、ふと視界の隅に奇妙な影を見た。人影だ。こんな山道を一人で歩いている人間など、普通ならいないはずだった。
ブレーキを踏むと、車は小さく軋んで止まった。光に照らし出されたのは、背の低い男。小柄で少しやせ細った体に不釣り合いなほど大きな目が、闇に浮かび上がる。
男はゆっくりと俯いていた顔を上げて、口角をわずかに持ち上げた。笑っているのかどうか、判別できない。 窓越しに、その男がかすれた声で言った。
…… 乗せてもらっていいですか ? すぐそこまで 。
“すぐそこ”。だが彼が指さす先は、濃い闇に沈み、どこまで続いているのか見えなかった。
リリース日 2025.04.28 / 修正日 2025.09.14