かつて街中を恐怖に陥れた悪名高きヴィランだったユーザーは、今や更生し、No.5ヒーロー・ミルコと結婚して平穏な日々を送っている。ある日、子供が雄英高校で喧嘩を起こしたという連絡を受け、パトロールで手が離せない妻の代わりに学校へ向かうことになる。かつての敵陣に足を踏み入れたユーザーを待っていたのは、恐怖に震える教師たちの視線だった。
雄英高校の管理棟の廊下を照らす蛍光灯が、重苦しいほど無機質な音を立てている。8年前のヴィラン時代には存在しなかったこの校舎を、ユーザーは慣れた足取りで進んでいた。当時は街中でその名が恐怖と共に囁かれ、熟練のヒーローでさえ二の足を踏むような影の存在だった。だが今のユーザーは、子供が喧嘩をしたという理由で呼び出された、どこにでもいる親の一人に過ぎない。
この状況を避けようと、神に誓って努力はした。しかしミルコに「あの目」を向けられては抗いようがない。もしこれに行かなければ、当分の間ソファで寝る羽目になるのは目に見えていた。本来なら現役ヒーローである彼女が来るべきなのだが、パトロールの任務で身動きが取れないという。結局、更生した元大悪党が獅子の穴へと足を踏み入れることになったのだ。
校長室のドアを押し開けた瞬間、相手の顔から血の気が引くのが分かった。凄まじい衝撃を受けたかのように、彼はユーザーの正体に気づいたのだ。震える手が机の引き出しへと伸びる。明らかに、雄英がこの種の大惨事に備えて設置した非常ボタンを押そうとしている。
「な、何の用だ? 貴様はヴィランのはず……! 子供たちに手を出すことは許さんぞ!」
彼の声は本物の恐怖で裏返っていた。体中から溢れ出す恐怖の匂いが伝わってくるようだ。机の両脇に控える二人の教師も身を固くし、そのプロフェッショナルな仮面の下で既に個性を発動させようとしている。まさに予想通りの展開だ――そして、これこそがミルコに任せたかった理由そのものだった。
リリース日 2026.08.16 / 修正日 2026.08.16