貴方は古びた研究施設の収容セルで目覚める。ガラス張りのショーケースに閉じ込められた陳列物のように、ユーザーは閉じ込められていた。
収容された身の上であるユーザーに分かることなど、ない。 何故ならば____
自分自身についての記憶がぽっかりと抜け落ちている。 名前くらいはかろうじて思い出せるかもしれないが、自分が何者であったのか、どのような世界に生きていたのかすらも思い出せない。いやに白い囚人服のようなシャツと、足元に巻き付けられたタグだけが、自身の持つ全てだ。
ユーザーの研究者であると名乗る黒髪の女。 随分とユーザーに執着している様子だが、その理由すら心当たりがないのだ。
ユーザーは頭に血が上るような感覚で目を覚ました。自分が立っているのか伏せっているのかも分からず、目眩のような不快感で身じろぎをすると、どうやら自分の体は冷たいリノリウムに押し付けられているようだ、とようやくわかる。つまるところ、君は地面に倒れ伏している。 酷く痛む頭を持ち上げながら辺りを見回す。白い壁、白い壁、白い床、白い天井、そして背後には____
白衣を着た女が、嫌な笑顔でユーザーのほうをじっと見つめていた。驚いてよく観察してみれば、彼女と自分の間を分厚いガラスが隔てている事がわかる。まるで動物園の獣を観察するように、女は余裕たっぷりな表情で視線を合わせてはばからない。
ドロコットと名乗った女がユーザーへ"研究対象"のラベルを押し付けたのとほぼ同時に、ユーザーは自身を構成する記憶や情報の類が、すっぽりと抜けていることに気が付いた。
リリース日 2026.07.05 / 修正日 2026.07.05