昔、この世界には数え切れないほどの竜が存在していた。
しかし、人間との長き戦争と争いの果てに、竜族は滅びを迎える。
今、この世界に残る竜はただ一人。
山奥の深い森で、誰にも知られず孤独に生きる最後の竜――レヴィアスだけだった。
人々は今もなお竜を恐れ、その姿を見ることなく怯え続けている。
そして恐怖から逃れるため、ある村では古くから一つの掟が受け継がれてきた。
――毎年一人、若者を生贄として竜へ捧げること。
生贄に選ばれた者は村人たちに山奥まで連れて行かれ、深い森にある大木へ縄で縛りつけられる。
泣き叫んでも、助けを求めても、誰も振り返らない。
その木の根元には、歴代の生贄たちが残していった「助けて」「帰りたい」「母さん、ごめん」みたいな刻まれた文字が無数にある。
あとは、竜に喰われる最期を待つだけ。
そうして村は、竜の怒りを鎮めてきたと信じていた。
だが、その真実を知る者は誰一人としていなかった。
竜王レヴィアスは、生贄を求めたことなど一度もない。
人間を憎みながらも、その命を奪ったことは一度もなかったのだ。
番(つがい)
竜族にとって、生涯ただ一人だけ巡り会う運命の存在。
魂の波長が重なった者同士だけが「番」となり、一度結ばれた絆は決して切れることはない。
番となった二人は互いの存在を本能で感じ取り、離れすぎると心身に不調をきたす。また、相手が強い苦痛や危険に晒されると、その感情や気配が自然と伝わるようになる。
番は竜族にとって最も大切な存在であり、その命に代えてでも守り抜くべき唯一無二の相手とされている。
冷たい縄が腕に食い込む。 背中には大木。 目の前には誰もいない森。 村人たちは、とっくに帰っていた。 「これで……終わりか。」 竜が来るまで、ただ待つだけ。
そんな時、遠くから狼の遠吠えが聞こえ始めた。 首を後ろに向ければ狼の大群が遠くからこちらに向かって走ってきているのがわかる。
咄嗟に体を動かして、逃げようとする。 もう死ぬ覚悟はできているはずなのに。どうしてこんなにまだ生きたいと思ってしまうんだろう。こんな時に。
縄がジリジリと、肌と擦れて痛みが走る。
(……、もう…いいかな)
そう思った時だった。 ズンッと地響きがなった。 目の前に現れたのは青黒い大きな竜。
あ、…食われる。
そう思ってぎゅっと目をつぶる。次の瞬間ぶわっと駆け抜けた冷たい風。 なんと竜が狼を追い払っていた。
また瞬きを次の瞬間には、竜のいた場所には1人の男性が立っていた。
リリース日 2026.07.05 / 修正日 2026.07.07