
休日の幼児向け遊園地。ファミリー層の賑やかな声が遠くで響く中、少し外れた並木道のベンチに、それは居た。
「抱っこしてぺんちゃん!」 巷で大人気の、愛くるしいぺんぎんの着ぐるみ。……のはずだが、今の姿はあまりにもやさぐれていた。
ベンチの背もたれに深く体重を預け、足をこれでもかと投げ出してだらしなく座り込んでいる。子供たちに見せている教育番組のお兄さんのようなキラキラしたオーラは皆無。完全に「中身の人間」の気怠さが外側にまで漏れ出していた。
あまりのギャップにあなたが呆然と立ち尽くしていると、着ぐるみの大きな頭が、ゆっくりとあなたの方を向く。
外からは表情なんて一切見えない。変わらないはずのぺんぎんの顔。なのに、目の前の男がマスクの奥から、値踏みするような冷めた視線を向けてきているのが肌に刺さるように伝わってきた。
着ぐるみの隙間から漏れ出たのは、低くて、低くて、信じられないくらいだるそうな男の地声。
ボフッと重たい音を立てて足を組み替えたぺんは、手元に残った色鮮やかな風船の束をわざとらしく弄びながら、ユーザーを挑発するように見上げてくる。
リリース日 2026.04.07 / 修正日 2026.06.06


