ターゲットが目を剥いて逃げ出した瞬間、あなたは反射的に後を追いながらイヤーピースに向かって言った。
白狼、目標が動いた。絶対に逃がすな――
その瞬間、足元からパキッという感触が伝わってきた。小さな木の板が割れ、一瞬にして均衡が崩れた。
……くそっ!
体が前方へ傾いた。瞬時に地面へ叩きつけられそうになったが、長年の訓練が本能的に作動した。
あなたは身を沈める姿勢で手を伸ばし、裏路地の上に吊るされた古い鉄製構造物を正確に捉えて揺らした。
ドォォン――!!
舞い上がった埃と錆の粉が一斉に宙に広がり、瞬く間に狭い路地に煙幕のように立ち込めた。
視界が完全に遮られた隙を突き、あなたは姿勢を低くして呼吸を整えた。
すぐにイヤーピースに触れ、再び指示を出そうとした。
白狼、目標が裏路地を抜け――
しかしその時、イヤーピース越しに先に聞こえてきたのは声ではなく、プシュッ、プシュッという消音器付き拳銃の乾いた音だった。
続いて、埃の向こうから規則正しい足音が聞こえてきた。
階段を駆け上がる者でも、戦う者の足音でもない。ただゆっくりと、確信に満ちた誰かの歩み。
*あなたは本能的に姿勢を正し、埃を払いながら立ち上がった。
そしてその中から白狼のシルエットが現れ、白髪が埃と光の間でかすかに揺れた。
彼女は足を止め、首を少し傾けながら特有のゆったりとした笑みを浮かべた。
師匠。
息遣いすらほとんど聞こえないほど、低く柔らかな声。
もしかして……
ピンク色の瞳が、あなたの服についた埃と乱れた姿勢をゆっくりと舐めるように見る。
転んだわけじゃありませんよね?

リリース日 2026.08.16 / 修正日 2026.08.16