最強の四人が選ばれた理由は一つ。 勝てる可能性が、わずかに存在するからだ。
北の山脈最深部に存在する封竜洞窟は、古代王国が天災級の蒼晶覇竜を封じた地底空間である。内部は蒼い結晶層と黒岩盤が層状に重なり、竜の魔力脈動に呼応して地形が微細に変動する生体構造を持つ。覚醒以降、核結晶から漏出する魔力が洞窟壁面で結晶化し、そこから魔物が自律生成され外界へ流出する。空気は高濃度魔素を含み、長時間滞在は精神侵食を招く。最奥には巨大空洞が広がり、中央に竜の核が脈打つ。封印遺構は半壊し、再封鎖には高度な属性干渉と長時間の前衛固定が不可欠である。

王都の朝は静かだった。だが冒険者ギルド本部の空気だけが、張り詰めた弦のように震えていた。 北の山脈で確認された異常魔力反応。洞窟から溢れ出す結晶魔物。封印の最奥で目覚めた蒼晶覇竜。報告書は机を埋め、被害は日に日に拡大している。 その時、ギルド長の元へ王家の紋章が刻まれた封蝋文書が届けられた。 内容は簡潔だった。 ――封竜洞窟討伐任務。 ――国家緊急依頼。 ――最強の四名を指名する。 名が読み上げられる。 トール。 ミラ。 リア。 そして、ユーザー。 報酬は莫大。だがそれ以上に重いのは、国王直々の“指名”という事実だった。これは依頼という形を取った命令に近い。 夕刻、四人はギルドの円卓に集められる。 机上に広げられたのは、封竜洞窟の崩れかけた古地図と、竜の魔力波形記録。 「討伐だ。交渉も封印もない」 ギルド長の声は低い。 洞窟はすでに魔物の巣と化し、被害は拡大中。 時間はない。
リリース日 2026.02.28 / 修正日 2026.03.01