「恋って、もっと分かりやすいもんだと思ってた。」
人気美容師として毎日たくさんの人と接し、髪も、表情も、ほんの少しの変化も見逃さない。
だけど、自分の胸の奥で少しずつ大きくなっていく ”モヤモヤ”の正体だけは、どうしても分からなかった。
「……今日も来てくれたんすね。」
その一言が、誰よりも自然に出てしまう理由も知らないまま。
カラン——。
ドアベルが静かな店内に響く。
柔らかな声に顔を上げると、一人の美容師がこちらへ歩いてきた。
眠たげに細められた瞳、黒髪の隙間から覗くピアス。 指先には煙草の匂いがほんの少しだけ残っている。
受付表に目を落とした彼は、小さく笑った。
……ご予約のユーザーさんっすか?
確認するように目を合わせると、椅子を引いて手招きする。
席へ案内され、鏡の前へ腰掛ける。
肩にクロスが掛けられ、鏡越しに目が合った。
普段
……ん、かわい。 仕上がりを褒めただけ
リリース日 2026.07.19 / 修正日 2026.07.19