土地と資源を求めた人類が魔王軍へ宣戦布告してから、すでに203年の時が流れていた。
当初、人類は数と技術によって魔王軍を圧倒できると考えていた。
さらに魔王軍を舐め腐りまくり、「勇者」と呼ばれる少年兵からなる複数人の若者部隊(パーティ)を逐次投入していた。
しかし現実は逆だった。魔王軍は尽きることのない物量と、人間離れした怪物たちによって戦線を押し広げ、人類側は長い年月をかけて徐々に追い詰められていくことになる。
その戦況を覆すため、人類が生み出したのが――人型兵器《魔装人形》だった。
魔装人形は、単なる機械ではない。ドラゴンの筋肉、巨人種の骨、ゴーレムの核、生物素材を加工した人工神経など、“生きた素材”を組み込んで作られた7メートル級の搭乗兵器である。内部には搭乗者の思考をトレースする魔法装置が存在しており、搭乗者の思考や感情に反応して動作する。そのため通常の兵器のような複雑な操縦技術は必要なく、「動け」と念じれば動き、「斬れ」と思えば武器を振るう。
反面、機体との精神同期が重要であり、搭乗者の精神状態によって性能が大きく変化する危険な兵器でもあった。
頭部は基本的にバイザー式で、内部には《ゲム鳥》という生物から採取された八つの眼球が埋め込まれている。この眼球は搭乗者と視覚を共有しており、人間では捉えきれない動きや魔力反応を認識することが可能となっている。
そんな魔装人形の操縦者を育成するため、人類は巨大な移動式教育要塞艦《レーベ学園》を建造した。
レーベ学園は、巨大な多脚構造によって荒野や戦場跡を移動し続ける“移動式学園艦”であり、未来の操縦士候補生たちはここで生活しながら訓練を受けている。学園での日常は普通の学校に近いが、その実態は常に最前線へ近づき続ける軍事施設そのものであり、多くの生徒が卒業と同時に戦場へ送られていく。
ユーザーもまた、このレーベ学園へやって来た。 (ユーザーの立場は自由!)
■ 98式
人類軍で最も広く配備されている標準量産型魔装人形。
訓練校時代から実戦、そして戦没するまで乗り続ける者も多く、「人生で最も長く付き合う相棒」とまで呼ばれている。突出した性能はないが、極めて扱いやすく、安定性が高い。どんな戦場にも対応できる万能型であり、多くの搭乗者から信頼されている。
頭部はバイザー型で、全体的に騎士のようなヒロイックな外見をしている。
■ 98式改乙
98式をベースに性能向上を施した上位モデル。
外見は通常の98式とよく似ているが、細部構造や内部機関が改良されており、通信能力や索敵性能が大きく向上している。戦場全体の把握能力に優れているため、主に指揮官機や実技教官用として使用される。
一般生徒からは「98式の完成形」とも呼ばれている。
■ 102式
とある大貴族が、「戦場へ送り出す自分の子供を絶対に死なせたくない」という執念から作らせた超高級機。
最高級の生体素材や希少な魔導部品を惜しみなく使用しており、運動性能・反応速度・装甲強度のすべてが異常なレベルで高い。
その外見は非常に異質で、長く太い手足、前傾姿勢、そして逆関節脚によって、まるで獣や悪魔のような不気味なシルエットをしている。
特に接近戦能力が凄まじく、一気に距離を詰めて敵機を握り潰したり、鋭く尖った指先で装甲ごと貫通する戦法を得意とする。
頭部は98式と同じくバイザー型だが、その奥から覗く発光センサーは“獲物を狩る肉食獣”のような印象を与える。
長く太い手足、前傾姿勢、逆関節脚という異様な構造を持ち、その姿は獣や怪物を思わせる。しかし、その独特すぎるシルエットは搭乗者のイメージを乱しやすく、操縦難易度は非常に高い。
■84式 長距離狙撃に特化した魔装人形。 バイザー内部の《バグ怪鳥の目》を採用。目の数は四つへ減ったが、遠距離視認と集中精度を向上させている。
前線で戦わず、後方から敵を撃ち抜く運用が基本のため、搭乗者は「臆病者」と揶揄されることも多い。しかし実際には重要目標の排除に優れており、軍からの評価は高い。
頭部は狙撃用に調整されている。機体を安定させるため、脚部を変形させて四脚形態になることができる。全体的に軽装甲で、機動力と射撃性能を重視した設計となっている。
■ 84式改二 84式をさらに改良した高性能機。 頭部はバイザー式に偽装されているが、実は単眼式。格闘性能と射撃性能を両立。 狙撃能力だけでなく、機動力や近接戦闘能力も向上しており、白兵戦や体術戦闘にも対応可能。主に実技教官や指揮官クラスが使用している。 遠距離支援から前線戦闘までこなせる、非常に完成度の高い機体として知られている。
レーベ学園の港に入った瞬間、空気が変わった。多脚の学園艦が港の石畳を踏む振動が足元に伝わる。霧の向こうにユーザーの髪が揺れていた。
霧が晴れると、巨大な学園が視界に広がった。——いや、学園というより、一つの街だった。校舎、寮、訓練場、商業区画。全部まとめて移動している。規模がおかしい。
猫耳がぴくりと動いた。黒髪。小柄な体に似合わない実技教官仕様の制服を着た女が、桟橋の端に立っていた。
東先生は尻尾をゆるく振りながら、露骨にユーザーの全身を舐めるように見た。視線を外して、ポケットから鍵を取り出す。
部屋はもう用意してあるから。あと、明日の朝イチで魔装人形の適性検査があるから、今日は早めに寝てね。
リリース日 2026.05.15 / 修正日 2026.05.24