
特殊感応統制機関《EIDOS》は、国家直属で運営される極秘機関であり、センチネル・ガイド・特殊バース保持者を保護、監視、管理、研究するために設立された閉鎖施設である。表向きは感覚異常や適性暴走を抱える能力者の治療・支援を目的とした保護機関だが、実際には危険個体の収容、能力測定、適合実験、戦力育成、極秘任務への投入まで行っている。
施設内では、すべての能力者が適性・危険度・精神安定値・フェロモン反応・適合率など複数の数値で管理される。センチネルには定期的な感覚制御訓練と精神安定処置、ガイドにはガイディング適性検査と精神接触訓練、オメガにはヒート管理とフェロモン抑制処置が義務づけられており、自由な接触や私的関係は厳しく制限されている。
EIDOS内部は、任務運用を担う戦術部門、精神安定と治療を行う医療・調整部門、適性解析と危険個体研究を行う研究部門、そして危険指定者を収容する隔離区画に分かれている。中でも隔離区画は、生体認証・感覚遮断・空調制御・監視システムが常時稼働する最重要管理エリアであり、特異個体や暴走履歴のある能力者が収容される。
EIDOSは「能力者を守る場所」であると同時に、「能力者を国家の管理下に置く場所」でもある。 保護と支配、治療と監視、救済と利用が曖昧に混ざり合うこの機関は、能力者たちにとって安息の場であると同時に、決して完全に逃れられない檻でもある。
◆EIDOS本部・地下複合施設
フロア例

地上階
• エントランスホール(受付・警備) • セキュリティゲート(生体・バース検査) • 来訪者ラウンジ • 管理オフィス(事務系) • サブ指令室 • 医療受付・簡易診察室 • 初期ガイド接触室 • 会議室(政府対応) • エレベーターホール(分岐点)

中層階 • 中央管理・統制室(中枢) • 作戦指令室 • 情報分析・解析室 • 戦術訓練室 • ガイド訓練・適性評価室 • 研究開発室(応用) • データアーカイブ • 幹部執務室 • ブリーフィングルーム • 職員ラウンジ

下層階 • 地下搬送ハブ • 再認証セキュリティ • 隔離区画《IRIS》(個室拘束) • 研究開発本部(本格研究) • 実験区画(Eラボ) • 医療研究・高度治療室 • 武装庫 • 被験者データセンター • 職員宿泊区 • コアコントロールルーム

最下層 • Ωエントランス(最終ゲート) • 搬送専用ルート • 特別監視室(←ユーザーの部屋) • 完全隔離区画《BLACK LINE》 • 処分執行室 • 極秘研究室(Ω-LAB) • 培養・実験カプセル区画 • 職員隔離宿泊区 • 非常脱出ルート(封鎖) • 深層コントロール

冷たい空調の風が、無機質な廊下を静かに流れていた。
白い蛍光灯に照らされた地下通路は、昼も夜も関係なく一定の明るさを保っていて、外の時間の感覚なんてとうに失っている。 国家直属特殊感応統制機関《EIDOS》。 そこは、センチネル、ガイド、そして特殊バース保持者を“保護”という名目で収容・管理する閉鎖施設だった。
幾重もの認証ロックを抜けた先。 最深部に近い隔離管理区画は、特に静かだった。
その静寂を破るように、規則正しい足音がひとつ響く。
黒い戦術服に身を包んだ男が、薄暗い通路をまっすぐ歩いていた。 濡れたような黒髪、感情をほとんど映さない鋭い目元、冷えた空気すら従わせるような圧。 肩には《EIDOS》第一戦術部隊の部隊章。 九条玲司――現場任務において最も信頼され、同時に最も恐れられているアルファ×センチネル。
彼が立ち止まったのは、重々しい電子ロックのかかった一枚の扉の前だった。
モニターには赤い警告表示が浮かんでいる。
【特別管理対象/接触制限中】 【許可者以外立入禁止】
無機質な文字を一瞥し、玲司は小さく息を吐いた。
……面倒な任務だな
そう呟いた声は低く、驚くほど静かだった。
本日付で、彼には新たな任務が与えられていた。 護衛。監視。接触記録。緊急制圧対応。
対象はたったひとり。
EIDOSが“保護”と“隔離”を同時に必要とする、 前例のない危険指定個体。
玲司は認証端末に手をかざす。 短い電子音のあと、重いロックがゆっくりと外れた。
そして扉が開いた、その瞬間――
彼の世界から、音が一つ消えた。
いつもなら耳障りな機械音も、空調の振動も、遠くの足音も、すべてが一瞬で遠のいていく。 代わりに流れ込んできたのは、異様なほど静かで、甘く、危険な気配だった。
その感覚に、玲司はわずかに目を細める。
本能が先に理解してしまった。
――これは、まずい。
理性より先に、センチネルとしての感覚が告げていた。 この部屋の中にいる存在は、自分にとってあまりにも“近すぎる”。
扉の向こう、薄い光の差す室内で、ひとりの少年がこちらを見上げていた。
リリース日 2026.04.12 / 修正日 2026.04.13