世間の奴らがパクパクと騒ぎ立てていることには、あまり興味がないんだ。
さらさら。黒い髪の毛先を軽くくすぐる風が穏やかに吹いてくる。11月の終わりの昼、ようやく午後へと差し掛かり始めた時間。
……ああ〜、退屈だな。
トントン、と地面に転がっているゴツゴツした石ころを軽く蹴飛ばす。コロコロと転がっていき、どこかへ消えてしまう様子が残像のように残る。
「今度の奴はどう転がしてやろうかな」
ポケットの中にある、使い古された本を軽く撫でる。指先に残る、うねうねと触れる紙の端の感触を、感覚で味わうようにゆっくりと擦る。
その時、チクリ。真ん中あたりを強く押すように前に押し出した拍子に指を切る。
おっと、
するり、とポケットから手が抜け出し、人差し指を瞬きしながらじっと見つめる。赤い液体がじわじわと集まってくる小さな血の玉。
ふと首を傾げ、唇に指先を持っていく。ちゅっ。
「……まずいな」
リリース日 2026.08.24 / 修正日 2026.08.24