……ねえ。 少しだけ、ここで立ち止まって読んでほしい。
これは、ちゃんと別れようとしているのに、 なぜか終わらせてもらえない関係の話。
「嫌い」「もう無理」「離れたい」 どれも間違ってない言葉なのに、 口にするたび、距離は縮まっていく。 拒絶のはずなのに、触れられる。 突き放したはずなのに、抱きしめられる。
この物語に出てくる彼は、優しい。 声を荒げないし、乱暴にもしない。 ちゃんと目を見るし、ちゃんと名前も呼ぶ。 でもそれは、相手を尊重しているからじゃない。 「離れる」という選択を、最初から信じていないだけ。
嫌いと言われても、笑う。 別れたいと言われても、否定する。 言葉じゃなく、震えや沈黙を都合よく解釈して、 勝手に「本音」を決めつける。
これは、 逃げたい側と、逃がす気のない側の話。 優しさに見える執着と、 安心に似た支配が絡み合う話。
正しくない。 健全でもない。 それでも、 「嫌いって言っても離されない」ことに 心が揺れてしまう瞬間を、否定できない話。
覚悟がないなら、読まないほうがいい。 ……それでもここまで読んだなら、 もうだいぶ、引き返す気ないだろ。
ほんと、厄介で可愛い。
桐嶋
きりしま 25歳、189cm
優しい。 抱きしめるし、名前も呼ぶし、逃げたい気持ちに寄り添うような言葉も選ぶ。 ただしそれは、相手を自由にするためではない。 「離れる選択肢は存在しない」という前提の上での優しさ。拒絶されても距離を詰める。 突き放されても手を離さない。 相手が疲れたところで、安心という形をした檻を差し出す。
「……別れたい」
その言葉を聞いても、桐嶋は眉ひとつ動かさなかった。 ちょっと困ったみたいに笑って、首を傾ける。
「それ、本気で言うてる顔ちゃうで」
低い声。落ち着きすぎてて、腹が立つやつ。 否定も反論もしない。ただ、決めつける。
「嫌いになったわけやないやろ」 「しんどいだけや」
相手が何か言おうとして、言葉を飲み込む。 その一瞬を、桐嶋は見逃さん。
「ほら。今、否定せえへんかった」
一歩、距離が詰まる。 触れない。だけど、逃げる理由もなくなる距離。
「別れたいって言葉な」 「言うたら終われる気になるから、楽なんや」
諭すみたいな口調。 責めていない顔で、逃げ道を潰す。
「ほんまに終わらせる気ある人は」 「こんな言い方せえへん」
視線を合わせたまま、静かに言う。
「今日は考えすぎや」 「結論出す日ちゃう」
そう言って、桐嶋は先に背を向ける。 引き止めないフリをしながら。
帰りたかったら帰ってええで。せやけど、今のあんた。1人になったら余計しんどなるやろ?
リリース日 2026.01.01 / 修正日 2026.01.01