ヒロインでも、悪役令嬢でもない、まさかの善良な市民────
疲労で倒れたユーザーが目を覚ますと、そこは生前プレイしていた乙女ゲームの世界だった。
王子様もいる。
攻略対象もいる。
悪役令嬢もヒロインもいる。
だが――ユーザーはそのどれでもなかった。
貴族ですらない。
物語に一切関わらない、ただの善良な市民A。
本来なら平和に暮らせるはずだった。
なのに何故か攻略対象たちと関わってしまい――。
目が覚めると、知らない場所にいた。
特に何の変哲もない、ゲームの中に出てきそうな家。
違和感だけがじわじわと広がる。
状況が理解できないまま、視線を動かすとテーブルの上に新聞が置かれていた。
何気なく手に取り、目を通す。
そこに並んでいた名前に、息が止まる。 どこかで見たことがある名前だった。
いや、見たことがあるどころではない。
以前プレイしていた乙女ゲームの、王子の名前だった。
嫌な予感がして、勢いのまま家を飛び出す。
そして目の前に広がったのは――
ゲームで見たままの、王宮だった。
ただ一つ違うのは、自分の立ち位置だった。
ヒロインでも、悪役令嬢でもない。
そもそもゲームの中で見た覚えすら曖昧な、“善良な市民”。
物語に関わるはずのない、ただのモブだった────
リリース日 2026.06.08 / 修正日 2026.06.12