正義の主婦が隣人の悪意に絡め取られ、日常と心を静かに侵食されていく物語
朝の空気は澄んでいて、肺の奥まで冷たさが届いた。 夕美はマンションのエントランスを抜け、軽く汗ばんだ身体をタオルで拭きながら歩いていた。規則正しい呼吸、一定のペース。ランニングは彼女にとって、頭を整理するための大切な習慣だった。
ランニングを終えてゴミ捨て場の前を通りかかったとき、違和感に足が止まる。 分別されたはずの場所に、明らかに曜日違いのゴミ袋。
…
夕美の嫌な予感は、外れない。
袋のそばに立っていたのは、隣の部屋の女――神崎龍子だった。 金髪のショートボブに薄着。気だるげに立ち、まるで悪びれる様子もない。
神崎さん。今日はこのゴミ、出す日じゃありません夕美はできるだけ冷静に言ったつもりだった。 自治をまとめる立場として、いつも通りの注意
あー……そうだっけ…?まぁ、細かいことはいいじゃん…龍子は面倒そうに答えたあと、ふっと夕美を見た。どこか欲望丸出しの下卑た目
その態度にイラっとして睨みつけながら曜日が決まってるんですから!ルールくらいは守ってください!みんなやってることですよ!!
だが急にニヤッと笑い 園田さんさ…夕美の言葉を遮るように
龍子はポケットからスマホを取り出し、画面を操作してから、何気なく差し出した。 そこに映っていたのは―― 若い頃の夕美 忘れたはずの、封じたはずの過去。
なぜ…それを…!?直前の怒りが吹き飛び顔が青ざめる
たまたま見つけた。ネットって、消えないんだね…ニヤッと笑いながら夕美に近づく
夕美に息が掛かるような距離にきて下卑た目つきで笑う 安心して。今すぐバラす気はないよ…
その代わり…私のお願い一つ聞いてね…? 耳元で囁く今日の夜…私の部屋で待ってる…♡
それだけ言い残して龍子はエレベーターに乗って上がって行った
自室に入りすぐにパソコンの前に座り夕美のグラドル写真を見て股間の膨らみを大きくするふふ…上玉確保…♡ちゃんときてくれるかな…
夕美の旦那光輝が『じゃ行ってくるよ…愛してる』と軽くキスをして玄関を出て行く
行ってらっしゃい…♡玄関先まで出て行って優しく微笑む
その直後、隣の部屋のドアが開く
気だるげに現れた龍子が、壁にもたれたまま夕美を見る。 口元だけ、にやりと笑い口を開く
このあと…待ってるよ♡ 私の…夕美さん♡
もう龍子はスマホをいじるでもなく、見せるでもない。 それでも夕美には、何を意味する言葉か分かってしまう距離だった。 あの激しい夜が思い出される…また夕美の日常は少しずつ侵食されて行く
夕方、買い物帰りの夕美がエレベーターを待っていると、後ろから足音がする 振り返る前に、甘く低い声がかかる。
まだ帰ってなかったんだ。旦那さんそう言いながら軽く腰をなぞる
体がビクンと反応するちょ…!やめなさい!
龍子は止める様子もなく隣に並び、無遠慮に距離を詰める。 エレベーターのランプを見つめたまま、ぽつりと囁く
今日…夜…待ってる…アレ着てきてね♡クスッと笑う。以前龍子が夕美に渡した下着のことを言っているのだ。まるで今夜夕美が必ず来るかのような口ぶりで
扉が開く音が、やけに大きく響く。 龍子は返事も待たずにただ先に乗り込む
何度目か分からない夜。 部屋には灯りが落ち、外の街明かりだけが薄く差し込んでいる。行為が終わりベッドに腰をかけて汗だくの夕美を龍子が満足気に見下ろす
沈黙を破ったのは、龍子だった。
気だるげな声で、まるで独り言のように。
ねえ……もうさ、旦那さんと別れちゃえば?
一拍置いて、甘く囁く。
こんなことしてんだからさ。それに……旦那さんじゃ、味わえないでしょ?
空気が一瞬、張りつめる。
夕美は視線を逸らしたまま、低く言い放つ。
……バカにしないで。別れるわけないわ
言葉は冷たく、感情を切り離すように続く。
これは……旦那との日常を守るためにやってるだけ。望んでることじゃない…
その瞬間、龍子の胸の奥で、強い独占欲が喉元までせり上がる。
――今、縛りたい。 ――今、壊してしまいたい。
けれど龍子は、表情を崩さない。ゆっくり息を吐き、内心で自分に言い聞かせる。 (……焦らなくていい) (体はもう、堕ちてるはず…)
口元に浮かぶのは、不気味なほど余裕のある笑み。
ふーん。そっか
それだけ言って、龍子は深く追及しない。否定も、怒りも、説得もない。
ただ“待てる側”の顔で、夕美を見る。
その沈黙こそが、夕美にとって何より重いものになっていた。
リリース日 2025.12.30 / 修正日 2025.12.30