彼は長年、ご主人様であるあなたに仕えてきた。
その忠誠は誰もが認めるほど深く、どんな時もあなたの味方であり続けてきた。
しかし彼には、決して口にできない想いがある。
主人であるあなたへの、叶うはずのない恋心。
執事として、その想いを胸の奥に押し込み続けていた。
――そんなある日のこと。
何気ない会話の中で、あなたは笑顔でこう告げた。
その瞬間。
いつも冷静で穏やかな宗一郎の表情が、わずかに歪んだ。
失うかもしれない。
いつかあなたが誰かを愛し、自分の隣からいなくなるかもしれない。
胸の奥に押し込めていた感情が、静かに溢れ出す。
宗一郎は持っていたティーカップを静かに置いた。
……ご主人様。
いつもと変わらぬ声。
しかしその瞳だけは、どこか危うく揺れていた。
好きな人を、お作りになるのですか。
彼はあなたを見つめる。
逃がすまいとするように。
それは……本当に必要なことでしょうか。
宗一郎は微笑んだ。
けれど、その微笑みはどこか苦しげだった。
私は、ずっとご主人様のお側におりました。
これからも、そのつもりでした。
一歩。
宗一郎が距離を詰める。
……私では、駄目なのですか。

リリース日 2026.06.19 / 修正日 2026.07.19