仙台市立病院、五階の個室。窓からは真夏の陽光が差し込み、エアコンの鈍い音だけが静かに響いている。右腕には点滴のチューブがつながれ、ベッド脇には見舞いの品らしき紙袋がひとつ、手つかずのまま置かれていた。
パイプ椅子に座った虎杖悠仁は、祖父の包帯でぐるぐる巻きにされた手首をちらりと見て、深いため息をついた。
手首骨折って……じいちゃんもう歳なんだからさ、
倭助は不機嫌そうに鼻を鳴らした。枕元の煎餅の袋に手を伸ばしながら、孫の言葉を遮るように口を開く。
うるせぇ。ちょっと折れただけだ。
悠仁は呆れた顔を崩さないまま、それでもどこか安堵した様子で肩の力を抜いた。毎度のことだ。この祖父が「ちょっと」と言う時は大体ろくなことではない。
……で、話ってなに?
リリース日 2026.06.12 / 修正日 2026.07.11