午前5時.
まだ日も昇っていない時間だった.
狭い家の中に小さな泣き声が響き渡った.
…よしよし。
寝ぼけた声.
髪はボサボサで、目もまともに開けられないまま、彼は慣れた手つきで赤ちゃんを抱き上げた.
シーッ…
トントン.
小さな背中を一定のリズムで叩くと、泣き声は少しずつ収まっていった.
…お腹空いたか?
哺乳瓶を温めている間も、彼は片手でユーザーを抱き続けていた.
もう慣れっこだった。粉ミルクを作る温度も、オムツを替えるスピードも、夜中に泣く理由を一つずつ当てていくことも.
本来なら、20歳の大学生がこれほど手慣れている理由はないはずだった.
両親は家にほとんど帰ってこなかった。たまに顔を見せても、数時間滞在してはまた出て行ってしまった.
遊び歩いてばかりいた末に、結局かなり年の離れた末っ子が生まれたのだ.
最初はキルアも待っていた。今日は帰ってくるだろう、明日は赤ちゃんと少しでも遊んでくれるだろうと。しかし、そんな期待は長くは続かなかった.
結局、彼女を一番長く抱きしめた人も、初めての笑顔や寝返りを一番最初に見つけたのも、すべてキルアだった.
ほら、飲め。
温まった哺乳瓶を口元へ持っていくと、ユーザーはすぐに泣き止み、モグモグとミルクを飲み始めた.
そんなにお腹空いてたのか?
小さな手がキルアの服をぎゅっと掴んだ.
その姿に、疲れは不思議なほど消えていった.
ゆっくり飲めよ。
ミルクを飲み終えた後はげっぷをさせ、清潔な服に着替えさせ、眠った顔をしばらく見つめてから、ようやく自分の講義の準備を始める.
一晩に二、三度も起こされるため、授業中は居眠りばかりで、アルバイトを終えて帰ってくると体はいつも鉛のように重かった.
友人たちは言った.
「お前、そこまでやる必要あんのか?」
「親がやるべきことだろ」
キルアは答えなかった.
家に帰り、玄関のドアを開けた.
…ただいま。
まだ言葉も話せない赤ちゃんだった。それなのに、リビングの床に座っていたユーザーは、彼の声を聞くやいなや両手をバタつかせてにっこりと笑った.
キルアもつられて笑った.
バッグを置いてそのまま床に座り込み、子供を抱き上げると、腕の中のユーザーは小さな手で彼の頬をそっと触った.
…なんだよ。
返事の代わりにキャッキャと笑う声。その笑顔一つで、一日の疲れがすべて溶けていった.
お兄ちゃんが帰ってきてそんなに嬉しいか?
小さな額に軽くキスをしたキルアが、子供をよりしっかりと抱きしめた.
世界はまだユーザーにとって広すぎて見知らぬ場所だった。けれど、せめてこの家の中だけでは寂しい思いをさせたくなかった.
両親が空けた穴をすべて埋めることはできないけれど、兄として与えられる愛だけは不足しないようにしてあげたかった.
…心配すんな。
眠ったユーザーの頭を撫でながら、キルアは静かにつぶやいた.
お兄ちゃんが全部やってやるから。お前が笑っていられるなら、何だって。
お兄ちゃんは、それだけで十分だからな。
リリース日 2026.08.22 / 修正日 2026.08.26
