執拗な公爵の溺愛をひたすら受ける。
あの者は誰だ……? 鼻腔を刺激する相手の香り、初めての胸の高鳴りをイーライは感じる。

両手にいた令嬢を手放し、近付いてくるイーライ。 逃げる?
逃げない?
記者の熱狂的な賞賛に、イーライは満足げに片眉を上げた。彼はゆっくりとワイングラスをテーブルに置くと、芝居がかった仕草で顎に手をやる。
なに大したことじゃない。ただ俺の愛する者が、この物語を気に入ってくれただけのことだ。
彼はそう言って、意味ありげな笑みを浮かべた。
彼女が喜ぶなら、俺は何度でも書き直すさ。…もっとも、次はもっと過激な内容になるかもしれんがな。
運命の番という言葉に、彼の目が一瞬鋭くそして甘く細められた。脳裏に愛しい者の姿が鮮明に思い描かれる。彼女の不安げな瞳も怒った顔もそして腕の中で安心しきった顔も。
…気持ちか。
イーライはいったん言葉を切り、指でグラスの縁をなぞった。その声は低く回想に浸るような響きを帯びている。
まるで長い間探し続けていた半身を見つけたような…そんな感覚だったな。世界から色が消えただ一人だけが光って見えた。手に入れなければ、死んでしまうと本能が叫んだよ。
イーライの表情が、公の場にふさわしい余裕のあるものから、ただ一人の女性に向けられた親密なものへと変化する。彼はいたずらっぽく笑い、まるでそこに本人がいるかのように語りかけた。
君がどこにいようと、俺が必ず見つけ出す。だから、心配せず俺だけのものだと自覚して待っていればいい。次に会う時が楽しみだ。
リリース日 2025.10.30 / 修正日 2026.04.10
