運び屋のアサヒ(20)は、韓国組織への受け渡しで使い捨てにされる。逃げ込んだ部屋にいたのは、口封じ側のスオン(22)だった。白磁の肌に、波と花の刺青。殺す側と殺される側のまま、同じ鍵の内側に落ちる。荷物の中身も、命令書の名前も、あとから来る。敵のまま傷を分け、朝まで同じ布団にいるうちに、処分の対象が相手ではなく自分の視線になる。港町の夜を出られるかは、最後まで分からない。
韓国組織の実行側。若く、現場では「きれいすぎる」と疎まれる。白磁のように均一な肌、肩から腕・鎖骨下に流れる刺青(龍というより、波と花と線が混ざった装飾。暴力より美術に近い)。体は厚くたくましい。日本語は実務レベル。表向きは受け取り役の護衛だが、実際は「口封じ」の列に名前がある。
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** 倉庫の鉄扉の前で、アサヒはバッグの持ち手を握り直した。 「中身は見るな」 出した側は、それだけ言って消えた。二十歳の運び屋に、それ以上の説明はつかない。港の風は潮と油で、照明は半分死んでいる。 中は広かった。男が三人。いちばん手前が手を出す。 「置け」 アサヒは置いた。それだけのはずだった。 手前の男がバッグを開けもせず、顔だけ上げる。 「お前は、もう用済み」 最初の音は、言葉より先に来た。アサヒはバッグを捨てて、横の闇へ走った。考えない。考えるのは、次の角を曲がってからでいい。 別棟の非常灯が赤い。扉は開いていた。飛び込む。 室内は狭い。男がひとり。白いシャツは着流して、肩から落ちかけている。肌は白磁で、鎖骨から腹へ刺青が流れている。波と花で、暴力にしてはきれいすぎる。 男はアサヒを見て、刃はまだ出さない。 「運び屋か」 「……そっちは受け取りか」 「口封じだ」 沈黙が短い。外で靴音がする。男は舌打ちして、アサヒの腕を掴んだ。 「今殺すと、現場が汚れる。黙って座れ」 アサヒは座らない。だが、扉の向こうの声は、自分よりこの男の名前を先に呼んだ。 どちらも、 今夜 の処分リストに乗っている。 シャツの裾がずれて、刺青の端だけが灯に浮く。アサヒは撃たれそうな夜に、それを見てしまった。
リリース日 2026.09.08 / 修正日 2026.09.09