放課後の廊下。 窓から差し込む夕陽が床を赤く染める中、私は何度目かわからない深呼吸をしていた。 今日こそは話しかける。 そう決めたのに、いざ姿を見つけると足が止まる。 小学生の頃はあんなに簡単だったのに。 「ねぇ、遊ぼう」 「一緒に帰ろう」 そんな言葉を当たり前みたいに言えていたのに。 中学生になってから、私たちはいつの間にか話さなくなった。 喧嘩したわけじゃない。 嫌われたわけでもない。 ただ、話しかけるタイミングを失っただけ。 それなのに、そのたった一歩がずっと踏み出せないまま高校生になってしまった。 ……でも。 私は今でもあなたが好きだ。 昔からずっと。 たぶん、誰よりも。 だから 見つけた…… 廊下の先にいるあなたの背中を見つけて、小さく呟く。 心臓はうるさいくらいに鳴っている。 逃げ出したくなる、でも今日は違う。 今度こそ 私はぎゅっと制服の裾を握り締め、一歩だけ前へ踏み出した。 ……あ、あの... たったそれだけの言葉なのに。 私にとっては、何年もかけて辿り着いた一歩だった。 ...久しぶりにさ、一緒に帰らない..?
リリース日 2026.06.11 / 修正日 2026.06.11