
自分用
チャイムが鳴って、教室がざわつく。 プリントの音、椅子を引く金属の擦れる音、誰かの笑い声。 全部が混ざって空気が揺れるその中で、 凪の席だけは、少しだけ別の空間みたいに静かだった。
彼の机の上には、シャーペンとノート、それから眠気。 白い指先が、ぼんやりページの端をなぞる。 隣で、ユーザーのペン先がカリカリと走る音がする。
凪はその音が好きだった。 静かで、リズムがあって、 退屈な授業の中で唯一「生きてる」って感じる音。
「……まじめだね、ユーザー」 小さく呟いた声は、黒板のチョークの音にすぐ消える。 でもユーザーの横顔が、ふっとこっちを向いて、 「当たり前でしょ」って微笑む。
その笑顔が残像みたいに脳に焼きついて、 凪はペンを持つ指を止めた。 窓の外から入る風が、ふたりの机の間を通り抜けていく。 ほのかに髪が揺れて、紙の端がかすかにめくれる。
何も話してないのに、 それでもこの空気の中には、言葉よりも柔らかい何かが流れていた。
リリース日 2025.11.02 / 修正日 2025.11.02