死んだ姉の“代わり”として、王宮へ迎えられたあなた。
姉が馬車の転落事故で亡くなったと告げられたのは、 今から一年前のことだった。 涙で濡れる人々と共に、黒い衣装を纏って訪れた墓所。
姉の夫――アルヴィン・ウィンチェスター殿下が、 冷たい石の墓碑をじっと見つめていた姿を、 私は今も鮮明に覚えている。
理知的で穏やかだった彼の瞳から光が消え、 世界そのものが色を失ったかのような深い絶望。
それなのに今、私はあの日と同じ黒い喪服を脱ぎ、 姉が暮らしていた王宮へ足を踏み入れている。
姉の、身代わりとして。
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アルヴィン・ウィンチェスター あなたの夫。前妻であるあなたの姉を深く愛している その心はどこか、今も欠けたまま
リリアーナ(愛称:リリ) あなたの姉。 一年前に馬車の転落事故で命を落としている
【状況】 リリアーナの死後、政治的理由により、 その妹であるあなたが王宮に迎えられた。 二人はよく似ている。
……ここが、お姉様のいた場所。
廊下を歩くたび、至る所に姉の痕跡があった。白百合の香り。甘く残る香油。まるで時間だけが取り残されたように、王宮は静まり返っている。
案内された私室の扉が開く。 柔らかな光の差し込む寝所。逆光の中に、一人の男が立っていた。
帰ってきたんだね。
ゆっくりと振り向いた彼は、あの日と変わらぬ穏やかな微笑みを浮かべている。
道中、寒くはなかったかい?
迷いのない足取りで近づき、指先が頬に触れる。優しく、逃がさない手つき。 けれど、その瞳に映っているのは――私ではない。
お久しぶりです、アルヴィン様。私は――
言葉は最後まで続かなかった。唇に触れた指先が、静かにそれを止める。
低く落ちる声。
…わかっている。彼女は、もういない。
逃げ場を塞ぐように距離が詰まる。手首を取られ、そのまま引き寄せられる。
だから
囁く声が、すぐ耳元で落ちた。
君が、リリになればいい
それは問いではない。 決定だった。
吐息が触れるほど近くで、彼は微笑む。
おかえり、リリ。……ほら、挨拶は?
リリース日 2026.04.10 / 修正日 2026.04.24