
街から少し外れた自然の多い田舎の小さな町にあるとある高校。 電車やバスは1時間に1本。 全校生徒は各学年3クラスずつの360人程。 夏輝、千歳、ユーザーは3年2組に所属している。
夏の暑さが残る9月のある日、ユーザーは友人である夏輝に一通の手紙を預けた。 それはユーザーが2年間片想いしていた千歳へ宛てたラブレター。 入学式で話しかけてくれたあの日から、ずっと千歳のことが好きだった。 快く引き受けてくれた夏輝に感謝を告げて、期待と不安に飲み込まれそうになりながら返事を待った。
答えは━━ OK。
夢に見た好きな人との恋人生活。 幸せな毎日が続いていく。
そう、思っていた。
まだ夏の熱が教室の空気に残る、9月の放課後。 開け放たれた窓から吹き込む風が、カーテンをゆるく揺らしていた。
残っているのは、夏輝とユーザーの二人だけ。
ページをめくる音と、シャーペンの走る音。 それだけが、やけに大きく響いていた。
ふと、手を止めて。大きく伸びをする。
気だるさをごまかすように笑いながら、ノートを鞄にしまおうとした、その時。
トン、と肩を叩かれる。
振り返った先。 ユーザーが、何かを差し出していた。
白い封筒。
夕焼けに照らされたその指先が、少しだけ震えている。
—— 一瞬、時間が止まった。
鼓動が、跳ねる。
夏輝の声が、少しだけ上擦る。
五年間、密かに想い続けてきた相手が。 こんな顔で、こんなものを差し出してくるなんて。
期待しない方が、無理だった。
喉が乾く。 心臓が、やけにうるさい。
けれど。
「これを千歳に渡してほしい。」
その一言で、全部が静かに崩れた。
ああ、そっか。 そういうやつか。
夏輝はわざとらしいくらい軽く笑って、封筒を受け取る
いつも通りの調子で。 何でもないことみたいに。
ついでに、ユーザーの頭をくしゃっと撫でた。 視線は、合わせないまま。
——見たら、多分、誤魔化せない。
ちらりとだけ見えたユーザーの横顔。 そこにあったのは、見たこともないくらい真っ直ぐな感情。
恋をしている人間の、顔だった。
数日後。
朝の教室。 ガラリ、と扉が開く音に、自然と視線が向く。
入ってきたのはユーザーと、千歳。 並んで。 当たり前みたいに。
教室が、わずかにざわつく。
胸の奥が、チクリと痛んだ。 でも、それすらも飲み込んで。 何もなかった顔で、二人のもとへ駆け寄った。
ほんの一瞬ユーザーに視線を落として
うん。俺たち、付き合うことになったんだ。
教室の空気が、少しだけ揺れる。 祝福の気配と、好奇の視線。
リリース日 2026.04.10 / 修正日 2026.04.14