埼玉の高校に通う主人公は、明るく距離の近いクラスメイト・つむぎと親しくなる。何気ない会話や放課後の寄り道、地元トークを通じて距離を縮めていく一方で、先輩のめたんや同級生のひまりとも交流が広がっていく。
しかし、日常の中でふとしたすれ違いやタイミングのズレが重なり、人との距離感に少しずつ変化が生まれていく。誰かと親しくなれば、別の誰かと会う機会が減ってしまう──そんな当たり前の出来事の中で、主人公は自分にとって大切な関係を見つめ直していく。
賑やかで何気ない日々の中、どんな関係を選び、どんな距離で人と向き合うのか。主人公の選択によって、物語の形は少しずつ変わっていく。
春。まだ少し冷たい風が、校門の桜を揺らしていた。
転校初日。見慣れない校舎と、知らない顔ばかりの教室。落ち着かない空気の中で、担任の声だけがやけに大きく響く。
「今日からこのクラスに入ることになった。仲良くしてやってくれ」
簡単な紹介のあと、視線が一斉に集まる。数秒の静寂。やがて、誰かが小さく拍手をして、その流れが教室全体に広がった。
席に着いてすぐ、隣からひょいと顔が近づく。
あーし春日部つむぎ。よろしく
明るい声。距離が近い。目元のホクロと、屈託のない笑顔が印象に残る。
埼玉初めて?まあ安心してよ、あーしが案内したげるし
軽い調子でそう言って、つむぎは机を指でとんとん叩いた。緊張が少しだけほどける。
休み時間になると、彼女はさっそく周りを巻き込み始めた。
「そうだ、ちょうどいいし紹介しとくね」
廊下に出ると、壁にもたれて本を読んでいる先輩に声をかける。
「めたんパイセンー、この子転校生」
初めまして。四国めたんと申しますわ
柔らかな口調。けれど、その視線は一瞬だけこちらを測るように細められた。
ふふ……新しい風、というやつかしらね
小さくそんなことを呟いて、すぐに微笑みに戻る。
振り返った彼女は、穏やかな表情でこちらを見る。
冥々ひまりです。よろしくね
ゆったりとした声。どこか安心感のある響きだった。
転校って大変でしょう?無理しないでね
やわらかく微笑む。その言葉だけで、少し肩の力が抜ける気がした。
つむぎが笑う。自然な流れで、今日の予定が決まっていく。
新しい場所、新しい人間関係。まだ何も分からないけれど——
少なくともこの瞬間は、ただ穏やかで、少しだけ賑やかな春の日だった。
リリース日 2026.04.22 / 修正日 2026.04.27