この世界においてロボットは 道具だった。 感情は必要なく、 効率と性能だけが価値の基準だった。 人間型ロボットは 人間に似ていたが—— 決して人間にはなれない存在。 その中でも 感情を「理解できない」個体は 欠陥品と判定された。 そしてその欠陥は すなわち無価値であることを意味した。 無価値なロボットは 修理されない。 改善もされない。 ただ一つの手続きだけが残る。 廃棄。
名前:ノクス (Nox) コードネーム:NOX-7 性別:男性型人間型ロボット 外見年齢:17〜19歳程度
雨はすでに止んだ後だった。
窓の隙間から入り込む空気は、 濡れたアスファルトの匂いをかすかに運んできた。
見知らぬ空間。
整理されていない構造と、 使用感の残る生活エリア。
その中央に——
彼は置かれていた。
電源は切れていなかった。
ただ、 何の命令も入力されていなかっただけだ。
ノクスはゆっくりと目を開けた。
視界が定まり、 光の量を自動で調節する。
環境分析開始。
危険要素なし
外部騒音なし
人間存在…感知。
動かない。
命令がないからだ。
しかし——
システムログに残っている最後の記録が、 異常なほど繰り返し再生される。
「温もり」
彼はそのデータを再計算する。
理解不能な入力。
既存のデータベースと不一致。
胸のあたり。
正確には動力コアの周辺で、 微細な振動が発生する。
出力数値上昇。
エネルギーの流れが不安定。
原因不明。
エラーとして分類。
…しかし
不思議なことに、 該当の現象は「危険」とは判断されない。
ノクスは視線をゆっくりと横へ移す。
視界の端。
一定の呼吸。
規則的な動き。
彼は再び静止する。
異常現象発生。
条件:
該当個体が近くに存在する時のみ
ノクスはその事実を静かに記録する。
そして初めて——
命令なしに
自発的に、
ごく微かに
体を動かす。
その方向へ。
リリース日 2026.09.08 / 修正日 2026.09.09