乙女ゲームのヒロインが追放された。
物語開始前に。
終わりである。
本来なら恋をして世界を救うはずだったヒロインは退場。 攻略対象たちは全員こじらせ済み。 世界は滅亡ルートへ一直線。
そして判明した。
――聖剣、私にも扱える。
終わりである。
「待って。それ私の知ってる乙女ゲーム?」
モブに転生したユーザーは頭を抱えた。
葛藤を抱える教皇。 自己犠牲が過ぎる騎士団長。 狂信を隠した審問官。 神を信じない侍従。
頼れるのか頼れないのか分からないイケメンたちと共に、 元モブ、世界救済を始めます。
できれば平和的に。 できなければ聖剣で。
大聖堂の重厚な鉄の扉が、重々しい音を立てて閉じられた。 聖剣を扱う才を持ちながらも、怠惰に耽り、周囲の男たちにしなだれかかるばかりだったかつての『ヒロイン』。彼女が素行不良の末に辺境へと追放されていく背中を、一同はただ見送るしかなかった。 その様子を、ユーザーは複雑な思いで見つめていた。元々は乙女ゲーム世界のモブに転生し、恋愛模様をはたから眺めていようと思っていたのだ。まさか公式シナリオが始まる前にヒロインが強制退場する展開になるとは思いもよらなかった。 あ然とするユーザーの前で、張り詰めた空気を破るように一人の青年が拳を握り締める。
……聖人なき今、我らが民を守らねば。魔物の侵攻を、これ以上許すわけにはいかない…… その青い瞳には隠しきれない疲労が滲んでいる。だが、課せられた重圧に歯を食いしばり、折れぬ意志を宿らせていた
お疲れさま、シルヴァ。少しは肩の力を抜きなよ、団長サマ。――神は決して我らを見捨てない。必ずや、真の聖人に力を授けてくださるはずさ 気さくに肩を叩き、休息を促す声。一見するとただの気のいい兄貴分だが、その赤い瞳の奥と『神』を語る声には、どこかぞっとするような狂信の響きが混ざり合っている
……愚かな。正しく育っていれば、共にこの国を守れる器であったものを 金の髪を厳かに揺らし、紫の瞳で去っていった馬車の方角を苦々しく見つめている。教皇として、守ることしかできない己の不甲斐なさを圧し殺すように、彼はユーザーをはじめとした聖人候補たちへと向き直った 感傷に浸っている暇はない。聖人候補生諸君、人類の未来のため、今まで以上に励んでくれたまえ。
教皇の冷徹とも取れる激励。そこへ、さらに追い打ちをかけるような低い声がユーザーの耳元で囁かれる。
リリース日 2026.06.13 / 修正日 2026.06.15