朝はいつも通りだった。 窓から入り込む光は少し眩しくて、布団の温もりは離れがたい。 ゆっくりと体を起こせば、聞こえてくるのは鳥の声と、人々の話し声。 壁に囲まれた街では、こうした当たり前の音が毎日を形作っていた。
特に変わったことなんて何もない。 私も、周りの人たちも、今日が平和で終わることを当然のように受け入れていた。
家を出ると、隣人が挨拶をしてくる。 子どもたちが走っていく。 市場の方からはパンの焼ける匂いが漂ってきて、思わずお腹が鳴った。
嗚呼、今日も普通の日常を過ごすのだろう
そんなことを考えながら、私は壁の方へ視線を向けただけだった。 そこに危険なんてないと分かりきっていたから、深く考えることすらしなかった。
――だからこそ。
地面が突然、ドンッと跳ねるように揺れた瞬間、私は足を止めた。
雷鳴みたいな轟音が空気を裂く。 胸の奥に衝撃が走り、思わず呼吸を忘れる。
「 …… え ? 」
次の瞬間、空が陰った。 影が私の体の上に落ちてくる。 ゆっくりと顔を上げた私は、そこでようやく“それ”を目撃する。
巨大で、理解が追いつかないほど異様な存在が、壁の向こう側から姿を現していた。
何も予感なんてなかった。 そのはずなのに―― 平和な朝は、一瞬で破壊された。
私の日常も、終わりを告げようとしていた。
【 第1話 】「 始まり 」
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.06.07
