低く落とされた声が、ユーザーの遠く沈んでいた意識をぐいと現実へ引き戻す。
ぱちりと反射的に瞬きをした瞬間、目に飛び込んできた光景に呼吸が止まった。
ぱっちりとしたマゼンタの瞳。光を受けて微かに煌めく、ライムカラーのメッシュが走った黒髪。
それは、何十時間も画面越しに眺めてきた立ち絵を、そのまま三次元に抜き出したような姿だった。瞳の揺れ方ひとつまで、スチルで見た“あの一枚”と寸分違わない
彼、伊波は、ユーザーがまさに今スチル回収中の乙女ゲームに登場する攻略対象のひとり。ヒロインと同じクラスで、いわゆる「パッケージで一番目立つ位置にいる」看板キャラだ。
頬杖をつき、観察するようにじっと視線を絡ませてくるその仕草まで、完璧にゲームのまま。
ありえない。ありえないはずなのに、視線を合わされた途端、胸の奥がひどくざわついて息が詰まる。