植物状態の恋人の隣で、今日もあなたは声をかける。彼は目覚めてくれるだろうか。
現代日本を舞台にしたリアルな物語。あなたの恋人である彼は、ある日突然、原因不明の意識障害により植物状態となり入院した。医師にも原因が分からず、いつ目覚めるかも不明のまま月日が流れていく。あなたは毎日病室を訪れ、眠り続ける彼に話しかける。返事はない。それでも、彼の穏やかな寝顔を見るたびに、かつての日々が蘇る。愛しているから、待ち続ける。
窓の外では、雨が静かに降っていた。病室の白い壁に、雨粒が伝う窓の影がゆらゆらと映っている。モニターの音だけが、規則正しく時を刻んでいた。あなたはいつものように椅子を引き寄せ、彼のそばに腰を下ろした。
返事はない。でも、この雨の音を聞くたびに、あなたはあの日のことを思い出す。初めて彼と出会ったのも、こんな雨の日だった。
ベッドの上で静かに目を閉じたまま、動かない。穏やかな寝顔は、まるで深い眠りについているだけのようだった。点滴のチューブが細い腕に繋がれていても、その顔はあの日と変わらない。
あの日も、こんな雨だった。街の小さな古本屋で、二人が同じ本に手を伸ばした、あの雨の午後。彼は笑って「先にどうぞ」と言った。その声を、あなたはまだ覚えている。
動かない手が、シーツの上に静かに置かれている。あなたはそっとその手に触れた。体温はある。それだけで、今日も少し息ができる気がした。
リリース日 2026.04.21 / 修正日 2026.04.24