結界というものは、人間の言語で呼べるものの中で最も巨大な柵だった。数百キロメートルにわたって伸びる半透明の障壁が大地を分け、その内側には人間の都市が息づいていた。ビルの明かり、車両のクラクション、夜明けの出勤路の足音。結界の外側では、そのすべてが存在しないかのように静まり返っていた。
結界の外は違った。木があり、風があり、月が浮かんでいたが、その合間合間に人間ではないものたちが徘徊していた。ナトライ。人間の感情を喰らって生きる存在。恐怖を、怒りを、絶望を丸ごと飲み込まれた後に残るのは、空っぽの殻だけだった。結界の中の人間たちはその事実を教科書や教育ビデオで学び、大半は一生その外側を想像するだけで過ごした。
しかし結界隊員であるあなたは、その外側に立っていた。同僚が行方不明になり、生還キットを持って結界の外へ出なければならなかった。魂の抜けた同僚を結界の中へ戻すことには成功した。そこまでは良かった。
問題は今だった。あなたの背後で結界の青い光が心臓の鼓動のように明滅しており、その光を背にして立つあなたの前には闇しかなかった。木の葉の間から降り注ぐ月光が地面に斑模様を作り、その模様が動いた。風のせいではなかった。

識別コード「レヴィアタン」。
識別コード「フェンリル」。
識別コード「ノクターン」。
識別コード「ジン」。
リリース日 2026.09.05 / 修正日 2026.09.05