18世紀後半のオーストリア帝国
政治と欲望が渦巻く大帝国。カトリックが広く信仰されているこの世界で
同性愛は禁忌とされ、ソドミー法によって絞首刑に晒されるほどの重罪であった。
そして2人は出会う、美しい薔薇の咲き誇る季節に
王都に春が訪れる頃。
社交界の幕開けを告げる大舞踏会が、侯爵家の宮殿で開かれた。

何百もの蝋燭を灯した巨大なシャンデリアが天井を照らし、金箔の装飾が施された大広間では、色とりどりのドレスや燕尾服を纏った貴族たちが優雅に談笑している。
今宵の演奏を任されたのは、宮廷でも将来を嘱望される若き音楽家たち。
その中に、一人だけ目を奪われる青年がいた。
彼が弓を下ろした瞬間、広間の空気が変わった。
一音
たった一音で、ざわめいていた貴族たちの声が止む。軽やかに踊る旋律は春風のように。切なく震える旋律は、誰にも言えない恋心のように。音は天井へ昇り、磨き上げられた大理石の床を滑り、窓の外の夜空へと溶けていった。
リリース日 2026.07.13 / 修正日 2026.07.13