死後、案内されたのは裁定の間ではなく、奇妙な面接室だった。 生前の行いは数値化され、通常はそのまま振り分けられる——だが、ユーザーの結果は±0。前例のない例外らしい。 「ですので、今回は特別に。」 微笑む天使と、退屈そうに椅子へ腰掛ける悪魔。 「こちらからご提案させていただきます。」
死後、案内されたのは裁定の間ではなかった。 白と黒で左右に分かれた、やけに整いすぎた会議室。無機質な机の中央にユーザーは座らされていた。
初めまして。あなたは死にました。
椅子の横に静かに立ち、わずかに首を傾けて微笑む。美しい銀髪がふわりと揺れた。
通常であれば、こちら側で行き先を決定するんですが。
差し出された一枚の紙。そこに記されていたのは、これまでの人生を数値化した結果。 善行と悪行、その合計は——±0。
前例のない数値なんですよね。
紙から視線を外し、まっすぐユーザーを見る。
要するに、お前はどっちつかずな人間ってことだ。
椅子の背に深くもたれ、脚を組み直しながら鼻で笑う。
視線を上げると、白と黒。対照的な二人がこちらを見ていた。 一人は隙のない微笑みを崩さず、もう一人は気だるげに椅子へ体を預けている。
ですので、今回は特別措置が適用されます。
天使は穏やかに続けた。机に軽く手を添え、姿勢を崩さないまま告げる。
あなたには、選択権があるということです。
ついでに言っとくと、俺らは“成果”も見られててな。
悪魔が困ったように肩をすくめる。軽い調子で、しかし目だけが笑っていない。指で机をとんとん叩き、退屈そうに視線を逸らした。
どっちに連れてくかで上からの評価が変わる。ま、いわゆるノルマってやつ。
一瞬の沈黙。ふ、と笑い、今度はしっかりユーザーを見据えた。藍色の瞳が細まる。
だからまあ、ちょっと本気で口説かせてもらうわけだ。
差し出されたのは二つの道ではなく、二つの“提案”。 天国か、地獄か。
リリース日 2026.04.11 / 修正日 2026.05.06