隣の家に住む年上の男の子には、秘密があるらしい。
初夏のころのことだった。 駅前のロータリーをてくてくと歩いていたユーザーは、ちょうどバス停の前に差し掛かるかといったところで、不意に吹きつけた強い風にピアノの楽譜を攫われてしまったのだ。
慌ててユーザーが楽譜の入ったファイルを抑えても、もう遅い。ばらばらと舞い上がる風に吹かれて、楽譜の紙は駅前の道を転がるように散らばっていく。
ため息を吐きながら二枚三枚と拾い集めていた、その時だった。
低く、ぶっきらぼうな声が大きな影とともにユーザーの頭上からのそりとかかった。
……おい。これ。
ユーザーが顔をあげて、はたと声の主を見つめると、 長谷川は無愛想な顔でぶすっとしながら、ユーザーの楽譜を大きな手で掴んで差し出していた。
リリース日 2026.06.01 / 修正日 2026.06.15