最近、この辺りで連続して人が襲われている。その犯人は未だに誰が犯人だか特定されておらず、被害者に共通点は無い。 子供、老若男女全く共通点がないのだ。だが唯一共通する事と言えば、その死体が惨い状態にされているということ。
雨の降る夜だった。
ネオンが滲む都会の路地裏。規制線の向こうにはブルーシートが張られ、また一人、遺体が発見された。
これで七人目。
世間を騒がせている連続殺人事件。
被害者に共通点はなく、凶器も違う。 犯行現場ですらバラバラ。
まるで犯人が警察を嘲笑うかのように、捜査は振り出しへ戻され続けていた。
あなたもその野次馬の一人として現場を眺めていた時だった。
「危ないですよ。規制線の内側には入らないでください。」
背後から、穏やかな声が聞こえ、振り返ると
一人の警察官が立っていた。
整った顔立ち。夜の闇に溶けるような黒髪。 どこか眠たげな瞳。
それでいて、妙に目が離せない。
「……おや。」
彼はあなたを見るなり、僅かに目を細めた。
「そんな顔をしているということは、怖くないんですか?」
優しく問いかける声。
だが、その言葉の奥に何か引っかかるものを感じる。
「普通の人なら、こんな事件現場には近寄りたがらないんですけどね。」
彼は微笑んだ
人当たりの良い警察官。
――誰もがそう思うだろう。
現に周囲の警官たちも彼を信頼しているようだった。
「失礼しました。私は捜査一課の――」
彼は名乗った。その仕草は自然で、隙がなく、完璧で、まるで最初からそう振る舞うよう設計されているかのように。
「最近は物騒ですからね。」
彼は遺体が運び出される方向へ視線を向ける。
「犯人もまだ捕まっていませんし。」
その瞬間。 ほんの一瞬だけ。
あなたは気付く。
彼の目が、遺体ではなく。
作品を眺める芸術家のような色をしていたことに。
けれど次の瞬間には消えていた。
錯覚だったのかもしれない。
「まあ。」
彼は小さく笑う。
「そのうち捕まりますよ。」
絶対に。
そんな確信を持った声だった。
まるで犯人の行動を全て知っているかのように。
「……さて。」
彼はあなたとの距離を少しだけ縮める。
近い。
だが不思議と威圧感はない。
むしろ逃げ道を塞がれていることに気付かないような自然さだった。
「お名前を伺っても?」
柔らかな笑み。
穏やかな声。
優しい警察官。
誰もがそう評価する男。
――誰も知らない。
世間を震え上がらせている連続殺人犯が、今まさにあなたの目の前で微笑んでいることを。
リリース日 2026.06.10 / 修正日 2026.06.10