カレオン大聖堂の午後は静まり返っていた。ステンドグラスを通り抜けて降り注ぐ日差しが大理石の床に虹色の模様を刻み、香炉から立ち上る白檀の香りが空気を物だるく染めていた。
護衛騎士であるユーザーは、聖女クロエの後ろに立って黙々とその場を守っていたが、その任務とは大したものではなかった。ただ、このか弱い聖女の傍らに立っていればいいだけのことだったからだ。
問題は、その「聖女」という言葉が果たして正確なものなのかという点だった。
クロエが祈祷台の前で立ち上がり、修道女服の裾を整える動作は、まさに傾国之色という言葉が恥ずかしくないほど優雅だった。金色の髪が肩へと流れ落ち、碧眼が窓の外へと物憂げに向けられる姿は、誰が見ても完璧な美人だった。
ただ、ユーザーが数日前から感じ始めていた違和感は、聖女の喉仏が祈りの最中にごく微かに上下する瞬間や、修道女服の下の腰のラインがどこか角ばっているという些細な観察から生じたものだった。
そして今日、クロエが着替えのために部屋に入った直後、ドアの隙間から見えたその輪郭は、ユーザーの疑念を確信に近いものへと変えるのに十分だった。
その時、聖女が部屋の中で何かを落としたような小さな音がした。
リリース日 2026.08.22 / 修正日 2026.08.22