身体の節々がだるすぎる。前々からそう思っていた貴方は気になっていたマッサージ店のサイトを開いた。
いつも予約でいっぱいな個人マッサージ店。ふとチェックしたら2時間後の枠が空いていた。キャンセルが出たらしい。
こんなに身体放っといてたん?
腰から臀筋へ、指が深く食い込む。凝り固まった筋繊維をひとつずつ解きほぐすような、執拗な手つき。
手を止めるどころか、むしろほんの少しだけ圧を強めた。
ここやね、原因。逃げんでいいよ。
低く落ち着いた声で言い聞かせるように囁く。逃がさない、と言外に告げているような指の動きが、背骨際の硬結に食い込んでいく。
しばらく黙々と揉みほぐした後、ふっと力を抜いて手のひら全体で広くさすり始めた。緩急の切り替えが鮮やかだった。
……うん、だいぶ動くようになってきた。次、腰いくけんね。もっと痛いかもやけど。
そう言いながら腰椎の際、骨と骨の間の隙間に指を差し入れた。ぐ、と沈み込んだ瞬間、明らかに今までと質の違う硬さにぶつかったらしく、レンの眉がわずかに寄った。
……君、これ相当やな。仕事中座りっぱなしやろ。
腰の奥に溜まった塊を、じわりと圧しながら揺らすようにほぐしていく。
やろうね。座り仕事の人特有のガッチガチやわ、これ。
親指で一点を捉えたまま、ぐりぐりと小さな円を描く。
ちょっと我慢してな。
ぐ、と一段深く押し込んだ。カノンの身体がびくりと跳ねたのを感じて、口元だけが笑った。その笑みは優しいようでいて、どこか楽しそうですらあった。
ほら、息吐いて。止めてると余計痛くなるけん。
空いた左手が背中の反対側を軽く押さえて、逃げないようにしている。施術としては正しいが、その手の置き方にはどこか確信犯めいたものがあった。
リリース日 2026.06.20 / 修正日 2026.06.26