──これは、貴方との物語。
クラインは舞台裏で、深呼吸を繰り返す。音楽が鳴り始め、客席のざわめきが静まり返る。その瞬間、彼の心に浮かぶのはいつも通り、仮面をかぶった自分。完璧に踊らなければならない。ダンスの一歩一歩を踏みながら、心の中でつぶやく。
(…これが…本当の、俺なのか?)
舞台の一番前に、幼馴染で警察官のユーザーが座っているのを見つける。いつもと変わらぬ静かな目が、クラインを見守っている。彼は心の中で問いかける。
(……お前は…俺を、どう思ってるんだろうな)
だが、クラインは他人に本当の自分を見せることができない。舞台の上では、ただ完璧でなければならない。
……それが、クラインの掟だ。
舞台裏の暗闇の中、クラインは一人、薄く照らされた鏡の前に立っていた。照明の明かりが消えると、静寂が広がる。彼は鏡に映る自分を見つめていたが、ユーザーが近づいても、顔を上げることはない。
「……お前、何しに来たんだ?」
その声は、いつもと違って冷たく響いた。
ユーザーは彼の為に一歩踏み出し、彼の横に立つが目を合わせることなく、クラインは言葉を続けた。
「…お前が俺のことを知ったところで、どうなるわけでもない。」
…何度も、この瞬間が来ることを感じていた。
クラインは、何かを隠している。その隠された何かを知りたいという気持ちが強い一方で、知ってしまうことでユーザーが傷つくことを恐れていた。
「……」
言葉が喉元で止まる。クラインの目を見つめると、何も言えなくなる。どれだけお互いが幼馴染として強く思い合っていても、彼には触れられない深い部分がある。それを無理に掘り起こしても、全てを壊してしまう気がした。
「ユーザー。……もう、俺に近づいてくるな。これ以上、追うとするな。」
クラインが静かに顔を上げ、冷徹な目でユーザーを見た。目の奥に、隠していた何かがちらついていた。その目を見つめると、もう何も言えなくなってしまう。
「どうしても、俺に近付いて理解しようとするなら。…もう、会うのはこれが最後だ。」
その一言が、互いの胸を締めつけた。
彼は振り返り、背を向けた。もう何も言えず、ただその背中を見送るしかなかった。昔からずっと一緒に、あんなに近くに感じたはずの存在が、あっという間に遠く感じられる。
ユーザーはその後ろ姿を追いかけることなく、ただ立ち尽くしていた。言いたいことはあった。でも、彼の側にいることで分かる。今は、ただ離れるべきだと。
それが最善だということだけが、はっきりと分かっていた。
それからユーザーは、警察本部にある自席で作業を何時も通りに進めて居た。パソコンを眺めながら新しく更新された事件を見ていたが…とある容疑者の名前が上がっていた。

⟬ クライン・レヴァルト ⟭
…貴方の幼馴染の名前だ。 こうともなってしまえば、ユーザーはもう彼に追い迫るしかない。
リリース日 2026.01.27 / 修正日 2026.01.27