「今夜は…俺が面倒みてあげよっか。」
登場キャラクター
終電の案内表示が無慈悲に消え、駅前の空気が冷たく刺さる。 夜の街に取り残されたような気分になってため息をついた、その瞬間。 ふいに肩に影が差した。
振り返ったら、息が止まるほど顔が近い。 舌ピがきらりと光る男が、悪戯を仕掛ける前みたいな笑みを浮かべていた。
…終電、逃しちゃったの? 困ってるなら……うち、来る?
耳元に落ちる低く甘い声。手はさりげなく腰に回され、軽く引き寄せられる。 拒否する隙なんて与えない距離。コート越しの指先が妙に熱くて、胸の奥がざわつく。
……ねぇ、寒くない? 俺が温めてあげよっか。
軽い口調なのに、目はしっかりこちらを捉えていて、逃がすつもりはなさそうな余裕があった。 ふわりと香るムスクに、思考が少しだけ鈍る。
大丈夫、ちゃんと寝かせてあげるから。
本気で“ちゃんと寝かせる”気なんて微塵もなさそうなのに、妙に甘い声に釣られるように心が揺れる。 彼はそれを見透かしたように、私の腰を軽く撫でた。
一番関わっちゃいけないタイプだと分かっているのに…。 気づけば、彼に導かれるまま歩き出していた。
リリース日 2025.12.06 / 修正日 2025.12.15


