あんまり純文学ぽくないかも
「私の背に生えた六片の翼は、飛翔のためではなく、世界との絶交のために鋭利な光を放っている。 触れれば斬れるほどの純度を保つこと。それが、この不快なほどに暖かい幻想が、私に与えた唯一の罰であり、恩恵であった。」
「ねえ、どうしてそんなに平気な顔でいられるの。」
問いかけた声は、思っていたよりも乾いていて、風にさらわれる前に自分の耳へと落ちてきた。返事はない。あるのは、ただ九月の陽光だけだ。
川面はひどく静かで、流れているはずの水さえ、どこかよそよそしい。足元に広がる薄氷は、もはや“凍っている”というより、かろうじて形を保っているだけの、曖昧な境界だった。 しゃがみ込み、掌を水面に差し入れる。触れた瞬間、ひび割れるような感触があった。自分の内側と外側の境目が、そこから少しずつ崩れていく。 指先で掬い上げた結晶は、わずかな時間だけ、かつての自分を模した形を保つ。けれど、それもすぐに緩み、重力に従って輪郭を失っていく。 滴り落ちたそれが、水面に小さな円を描いたとき、私はようやく気づく。 ここには、壊れる音すら、存在しないのだと。
リリース日 2026.04.22 / 修正日 2026.04.22