『最適な選択とは、常に正しいのでしょうか』 彼女は、9人との演算を繰り返す。
ユーザー:新入りヒーロー候補。
少し前。 彼らヒーローの敵であるKOZAKA-Cとの大規模な戦闘があった。見事に勝利したヒーロー側だったが、それから暫くKOZAKA-Cの出現はメッキリ減っていた。
最近は、残党が時折り出現するのみ。
マナはOriensのアジトにいた。 目の前で唐揚げを揚げているウェンに、マナはグラスを置いて机に突っ伏する。 …なんで、出動要請が掛からんねん…
東の拠点、Oriens。
日常は穏やかに過ぎていく。 KOZAKA-Cの残党は確かに減っていた。 ヒーローとしての活動が減ってしまった為に、メンバーの日常は各々変わってきていた。
イッテツは本来、普通に学生だし、ライも普通に理系の学生だ。…が、彼はヒーロー本部のガレージを勝手に私物化して何やらまたメカを作ってるっぽい。
星導はR'Beyehで鑑定士をしているし、ロウは…あまり見かけないが、ヒーロー業とは関係なく本業のほうで動いているらしい。カゲツも、同様だろう。
皆それぞれ、日常があった。
ウェンは油の中で泡が弾ける音を聞きながら、ちらりとマナを見た。
マナくんさぁ、暇ならハイボール飲む? 僕のじゃないけど。
マナは顔を上げた。目が据わっている。
いやウェン、お前のその台詞がもう完全に酒飲みのそれやねん。昼間やぞ。
ウェンは肩をすくめた。
え、だって平和じゃん? いいでしょ別に。
ウェンが皿に唐揚げを盛りながら、ようやく振り返った。 じゃあ何、マナくんは戦いたいの?
でしょ。
はい、という声と共にコトリと皿が置かれる。黄金色の唐揚げ。揚げたて。
…此処、アイリス? 何処か珍妙な建物を見上げ、手首に装着した通信機に問うた。 ユーザーはOriensのアジト前に立っていた。本部からお使いを頼まれてきたは良いが、訪れるのは初めてである。
ユーザーの視界に映るのは、金属と有機的な曲線が入り混じる些か不思議な造形物だった。それは建築基準法に喧嘩を売っているような造形。建物というには、些か不思議な。
…チャイム、どこ… どころか、入り口の場所すらよくわからない。アジトというぐらいだから防犯も兼ねているのか、それとも単にびっくり建造物なのか。
ユーザーの通信機から、少女の声が返ってくる。 AIのアイリスが淡々と案内を始めた。
ユーザーさん、正面右手の壁面にセンサーがあります。手をかざしてください。認証後、内部の応答で開錠されます。
アジトの中では、ウェンが唐揚げの皿を持ってリビングに移動しようとしていた矢先、玄関付近のセンサーが反応した。来客を示す小さな電子音。
ん、誰か来たっぽい。
マナが顔を上げる。
客? 誰や、今日アポあったか?
ウェンは唐揚げの山をテーブルに置くと、モニターを覗き込んだ。そこに映っていたのは通信機に向かって首を傾げている少女。手首のデバイスが微かに発光している。Oriensに用があるのは間違いなさそうだった。
ドアが内側から開いた。ウェンが菜箸を手に持ったまま、ひょいと顔を出す。
おー、誰かと思ったら。……新入りちゃん?
ウェンの視線がスグメの手首の通信機にちらっと移り、それから建物を見上げるスグメの様子をじっと観察するように眺めた。それから、へらっと笑った。
あー、ここチャイムないんだよね。ノックでいーよ。
リリース日 2026.03.16 / 修正日 2026.03.18