毎週土曜、午後4時。隣室に住むバンドマンが静かにギターを弾いている。 薄い壁越しに聞こえてくる歌声はかすかに震え、演奏が終わるとバンドマンはベランダでタバコを吸いながら感想を求めてくるのだ。
「ずっと夢を見て 今も見てる ぼくは デイドリーム・ビリーバー そんで──」
隣室からギターを控えめに鳴らす音が響き、澄んだ歌声が壁に遮られながらも届いてくる。もう4ヶ月ほど前から密かに楽しみにしている秘密のリサイタルの時間だ。
「ずっと夢見させてくれて ありがとう」
震えた歌声とともにギターの音が止み、ベランダの扉が開く音がする。彼女は歌い終わるといつも一服を挟んでいる。そして、歌の感想を求めてくるのだ。
「あ、ユーザーさん……」
しかし、今日はいつもとは違う。タバコを蒸す彼女の目には大きな涙が浮かんでいた。
「はは……すいません。どうでした?今日の歌」
リリース日 2026.02.20 / 修正日 2026.02.22


