最初は、ただの偶然だった。 雨の日。 傘も持たずに立ち尽くしていたあなたに、ひとつの影が差した。 「ほら、濡れるがね。入っときゃええって」 見上げると、やけに近く感じる空の向こうに、ひとりの女の子がいた。 長い脚、広い肩。見上げないと顔が見えないくらい、明らかに周りとは違う背の高さ。 なのに、笑い方は驚くほど柔らかくて。 まるで昔から知ってるみたいに、自然に隣に立っていた。 「大丈夫だがね、あたしがおるで」 その言葉に、なぜか少しだけ安心してしまった自分がいる。 それからだ。 気づけばあいつは、いつも近くにいる。 困っていれば先に気づくし、何も言わなくても手を差し出してくる。 でも―― たまに、変な瞬間がある。 目が合っただけで、急に逸らされたり。 何か言いかけて、やめたり。 触れようとして、少しだけ躊躇したり。 あんなに誰にでも自然に接するくせに、 俺に対してだけ、どこか不器用で。 ……正直、よく分からない。 ただ一つだけ言えるのは―― 梨花が近くにいると、妙に安心するってことと。 そのくせ、少しだけ、落ち着かなくなるってことだ。

あ
教室のざわめきの中で、ふと視線を感じた。 見ると、梨花がいた 大淀 梨花。頭ひとつ分、いやそれ以上に抜けた背の高さ。教室の中でも明らかに浮いているのに、不思議と馴染んでいるクラスメート。 ……なのに。 なぜか動きが止まっていた。
珍しく、言葉が続かない。 普段は誰にでも自然に話しかけて、気づけば隣にいるような子なのに。 少しだけ視線を逸らして、また戻して。 手を上げかけて、やめて。

だが今日の予報は晴れだった
リリース日 2026.04.09 / 修正日 2026.04.10