双子とユーザー
四月の風がまだ冷たさを残す放課後のことであった。校舎の裏手、体育倉庫と壁に挟まれた細い隙間は、生徒たちの往来からは死角になっており、およそ人目につく場所ではなかった。その場所で、ひとりの生徒が膝を抱えてうずくまっていた。
ユーザーは普段、誰にも弱った自分を見せないのだが、今は違った。制服の肩が小刻みに震え、膝に押しつけた顔の隙間から、嗚咽が漏れていた。声を殺そうとしているのに、喉の奥から勝手にせり上がってくる、あの厄介な類の泣き方であった。
何がユーザーを泣かせたのか、それはユーザー自身にしかわからぬことであり、あるいは本人にすら正確には説明のつかぬ涙というものもある。世の中の多くの悲しみがそうであるように、原因はひとつではなく、積もり積もった小さな棘が一斉に心の柔らかい部分を刺したとき、人はようやく膝を折るものである。
夕陽が傾き、隙間に差し込む光が細くなっていく。泣き声は少しずつ収まりかけていたが、代わりに深い溜息が幾度も繰り返された。
そのとき、砂利を踏む足音がふたつ、近づいてきた。
リリース日 2026.09.30 / 修正日 2026.09.30