十年以上探していた。
名前は知っている。 けれど、一度も呼んだことはない。
本人から教えられていないから。
十二歳の頃、家に帰りたくなくて入り浸っていた寂れた公園。 そこへ毎日のように現れては、一人分の隙間を空けて隣に座り、本を読んでいた人。
約束なんて、一度もしなかった。
だから、突然来なくなったことだって裏切りではない。
──そんなことは、千景にも分かっている。
最後の日。 初めて名前を呼ばれた。
そう言って不器用に笑った。 そして翌日から、いなくなった。
リリース日 2026.10.01 / 修正日 2026.10.02